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 こんなこともあった。それは、ある化学メーカー傘下の設計事務所とのビジネスの中で起こった。

 新宿副都心の高層ビルに引越をするという。この設計事務所は企画設計を行う部署であったので、すでに企画設計専用のパソコンCADシステムが導入されていた。このパソコンCADシステムは当時、実験的にLAN対応をしていたため、引っ越し先の部屋を見て、LANの配置を検討することとなった。




 その部屋に入ると、フリーアクセス・フロアとなっており、所々に電源コンセント、LANケーブル用の出入り口が設置されていた。それでは次に机のレイアウトをパソコンCADシステムで描いてみようということになった。入力のため、この建物の竣工図面を不動産管理会社に提供してもらった。

 数日後、手に入ったというので、その図面を抱えて引っ越し先の部屋に入った。ところが電源コンセントやLANケーブル用の出入り口の配置が竣工図面の通りではなかった。いくつかの原因が考えられた。

 ゼネコンから入手した最終図面に、内装業者が別途、手を加えたのかもしれない。あるいは、不動産業者に内装業者の図面が渡っていなかったのかもしれない。いずれにしろ、提供された図面と現況は異なっていた。結局、巻き尺をもって実測し、それを再度、CADデータとして入力した。

 前述したように、建物が完成した後の各業者間のコミュニケーションに問題があったのかもしれない。最新のインテリジェントビルを謳っているのに、現状はこのような状況だった。無駄が多すぎた。複数の業者間の調整が行われていない。なわばり意識と利害の主張とノウハウの非公開。FM(ファシリティ・マネージメント)も声高に提唱され始めていたが、問題はCADシステム以前のでもあった。

 パソコンCADシステムは普及し始めたが、データ互換性の問題も顕在化した。相変わらず、最終成果物は「出力図面」であったが、その図面を制作する過程で、(当時は)副次的に生産されたCADデータは誰のものであり、どのように流通させればよいのか。通信環境の整備も個々の組織が個別に行っていたので、受け渡しも非効率だった。現在に引き継がれる課題は、すでにその時、顕在化しつつあった。

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