top pageothers>08.11_Vol02













 米国では、オバマ次期大統領が着々と次期政権の陣容を整えつつあり、すでに新政権が誕生したような様相となっている。ブッシュ政権の8年間の失政で米国の威信は低下したが、それでも何とかの鯛。唯一のスーパーパワーであるには違いない。

 米国大統領。世界最大、最高の権力者。その権力の実態は詳細には知り得ないが、一人の「人間」がその権力を持つ。2009年1月20日のオバマ大統領の就任を前に、大統領の人間的な側面を考えてみた。


 ウィリアム・ジェファソン・クリントン。通称、ビル・クリントン。第42代大統領。1946年8月19日生まれだから、日本流にいうと還暦を迎えたばかり。大統領退任後は、自らの財団をベースにさまざまな社会活動を行っている。そして、今回の民主党大統領予備選でのヒラリー支援の活動で再び、脚光を浴びた。

 ヒラリーの自伝を読み、わかったのはビルとヒラリーは政治的な同志であり、政治の世界の足を踏み入れた頃から、すでにワシントンを目指していたことだ。ただビルには大きな問題があった。女性にもてすぎる...。

 ビルは家庭環境に恵まれなかった。そんな中で生き抜くため、ビルは他人にどのように接し、うち解けていけばよいのか学んでいったように思う。特に女性との間で。再婚し、苦労している母親への思いもあったのかもしれない。そんな特質はビルを世紀のコミュニケーターへと変身させた。そしてモニカと出会う。

 ヒラリーとは政治的な同志。それは、ある時期から男女の関係とはかけ離れたものとなったのかもしれない。生き馬の目を抜くようなワシントンでの政治生活の中で、ヒラリーは最大の味方だったろうが、気を抜ける相手ではなかったと思う。きっとヒラリーに優しさは期待できなかったのだ。

 そして一大スキャンダルは明るみになった。それでも不思議に、ビルはいぜんとして米国民、ベビーブーマーの間で人気が高い。ビルの任期中は経済も好調で、9.11もまだ先のことであったし、比較的、良い時代だったからなのかもしれない。それよりも、そんな間違いもあるさ。大統領も普通の男さ。だから我らの大統領さ。米国民はビルを許した。

 あのスキャンダルの際、見事な対応で目立ってしまったのはヒラリーの方だった。ヒラリーの対応は女性にも好感を持たれた。そして、きっと今の彼らは政治的な同志であると共に、仲のよい茶飲み友達のような関係なのかもしれない。
 心配もある。ヒラリーはまだ現役。糸の切れた風船のようなクリントンはまた誰かを探し始めるのかもしれない。


 ジョージ・ウォーカー・ブッシュ。第43代大統領。1946年7月6日生まれ。クリントンと同世代。遠く離れた島国に暮らし、報道でしかブッシュの動向を知り得なくとも、この8年間はひどい失政だったと考えてしまう。

 CNNはブッシュが退任後に住むと噂されている住宅を紹介していた。比較的、裕福な白人層が住む地域で、大邸宅でもなく、今のところは、セキュリティー確保のための高い塀もない。ブッシュがやってくると聞きつけたその街に住む女の子は家の前で手作りの菓子を売って稼いでいた。大統領を退任すれば、まあ失政、間違いもあっただろうけど、普通の人の戻れるというのも、米国の良さなのだろう。

 ブッシュというと、第一期の就任式の一シーンが忘れられない。就任の宣誓を待つ間、ブッシュは落ち着きがなく、どこかおどおどしていた。そんな不安を振り払うかのように、ブッシュが視線を送ったのはパパ・ブッシュの方だった。「パパ、僕は大統領になってしまったよ」と。

 人にはきっとそれぞれの持ち分がある。ブッシュは大統領になってはいけなかった大統領だったと思う。そんな思いが彼を何かに向けて駆り立てた。きっとブッシュはテキサスの人のいいあんちゃん、今ではいいオヤジなのだと思う。

 取り巻きも悪かったに違いない。そして、テキサスの人のいいあんちゃんの施政下でイラクでは多くの血が流れた。戦争という以外の選択はなかったのかとどうしても考えてしまう。


 バラク・フセイン・オバマ・ジュニア。第44代大統領。1961年8月4日生まれ。彼の出自、経歴はここ一連の動向に中で多くが語られた。インドネシア、ハワイで育ち、「黒」なのか「白」なのかという自らのアイデンテイティに悩み、シカゴの黒人コミュニティーに居場所を見つける。そして政治世界の階段を足早に駆け上がり、そして2009年1月20日を待っている。

 彼の経歴を知ると、バランスと配慮の人だと思う。自らの中に流れる「黒」と「白」の血のバランスをとり、米国内から見れば一種の辺境で育ったという複雑な背景を多様性へと統合する中で、オバマはバランスと配慮を学んだ。
 そのバランスと配慮は新政権の陣容にもよく現れている。一つは「青」「老」のバランスであり、他方は「黒」「白」「スパニッシュ」「日系などのアジア」のバランスだ。

 クリントンでも、ブッシュでもないオバマ。そのバランスと配慮を知る時、すでに降りてしまった前々任者、前任者へ感じるような親近感はない。バランスと配慮の背後にある矛盾から、オバマは決断したら「強い」、史上かつてない強硬な大統領になるようにも思う。

 オバマの次の行動で最も気になっていることがある。それは就任式の際に「フセイン」というミドルネームで呼ばれかどうかだ。オバマはイスラム教徒ではないと公式に述べている。それでも、この「フセイン」というミドルネームが就任式の際に公言されれば、それはイスラムに対する明確なメッセージとなる。

 翻って、遠く離れた島国で起こっているさまざまな出来事。政策実行へのスピードもなく、発言もころころと変わり、政策と政局も混同し、これまでと様相の異なる厳しさを迎える新年への展望もない。そして「人」がやっているという姿がどうしても見えないのが悲しい。

[2008.11.20]

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