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 3月6日、テレビニュースである裁判結果が報じられた。36歳のミャンマー人女性が国外退去処分の取り消しを求めた訴えを東京地裁が棄却。

 この女性は2007年4月、東京入局管理局から不法滞在で国外追放処分を受けたが、日本人男性と実質的な婚姻関係にあるとして、処分取り消しの裁判を起こしていた。

 争点は、40歳の年齢差。東京入局管理局は、40歳の年齢差のある高齢男性との結婚の動機が、愛情のみに基づくものか疑問として国外追放処分を命じていた。

 ニュース報道によると、東京地裁は判決で、男女間の年齢差は、必ずしも恋愛感情の妨げになるものではないとはいえ、男性は2度の離婚暦を持ち、3人の子どもがある一方、原告は結婚暦も子供もなく、実際、男性をお父さんと呼んでいるとした。

 さらに、二人の生活時間が異なり、逮捕後に婚姻届が提出されたことなどから、真摯な合意に基づき共同生活を営む意思があったか、大いに疑問との判決となった。この結婚が偽装された可能性に言及したことになる。

 ニュースでは判決後、二人が腕を組んで帰宅する様子と共に、一生、一緒にいたいとの女性の言葉も放映された。

 齢の差結婚といえば、最近ではミッキー・カーチスが33歳、米国で話題となった元プレイメイトのアンナ・ニコル・スミスとテキサスの石油王は63歳。何かと好奇の目で見られるようだ。

 判決にはいくつか争点がある。ひとつは国際結婚。この女性がミャンマーからどのような事情で我が国にやってきたのかは報じられていないが政治的な背景はないようだ。入管当局は、不法入国、滞在を目的とする偽装結婚の疑念をもった。

 国際結婚であるのに加えて、40歳という年齢差。男女間の年齢差は、必ずしも恋愛感情の妨げになるものではないとしているにも関わらず、真摯な合意をもって共同生活を営む意思があったか、大いに疑問との判決は、この二人の男女の内面にまで踏み込み過ぎている。

 最も気になるのは、実際、男性をお父さんと呼んでいるとし、それを二人の婚姻への違和とした点だ。パートナーの男性の中に、父性を期待する女性もいる。お父さんと呼んでいるとしても愛称かもしれないし、それをもって、性的存在としての男女関係に疑問をもつのはおかしい。この女性には、40歳上の男性に対してではなくとも、パートーナーの男性の中に、父性を見ざるを得ない心理的な要因があるのかもしれない。

 女性の側にも、当初、40歳上の男性と実質的な婚姻関係をもつことで、法的に認知され、我が国に滞在できるとの動機はあったかもしれない。現在、76歳となっている男性の側にも、この女性が国外追放のリスクを抱えているので近づいてきたかもしれないと思いつつも、独り身の寂しさを癒してくれるとの思いもあっただろう。

 ごく普通の恋愛、婚姻にも、それぞれに秘匿された動機や思いがある。真摯な合意を持って共同生活を営む意思の内容までは第三者が推し量れない。恋愛、共同生活、婚姻とは、男女間の自由な意思であり、そこにまで法は踏み込んではいけないのではないか。

 さらにニュース報道では、40歳という年齢差があることで、この男女は、生活感を近しく共有するのが困難だとも判決にあったと報じた。40歳。生きてきた時代背景も異なるし、育った国も違う。それらの差異を、極端に乗り越えられない強固なものとすると、男女間、人間同士での「通じ合い」は不可能となる。

 人間はもっと複雑なもの。年齢や国籍という差異を超えられる「通じ合い」の回路を見つけられるもの。この判決は、二人の内面に踏み込み過ぎたと共に、そんな人間の「通じ合い」の不思議さに目を向けていない。

 この女性は入官当局による収監と国外追放の恐怖を語った。控訴するだろう。願わくば、高裁段階では、この二人が、40歳という年齢差や国籍の差異を超える「通じ合い」の回路を発見したのかもしれないことを見定めて欲しい。
 
[2008.03.08]

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