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 毎週、木曜日の19時から、フジテレビ系で放映されている「クイズ!ヘキサゴンII」。おバカなタレント(と他称、自称)たちが島田伸助が出題するクイズに、想像できないような回答を繰り返す。

 とにかく面白い。だが何度か観ている内に、哀しくなってきた。おバカなタレントたちは、そのキャラを売っているのだから、同情もいらないし、何の関係もないのだから、哀しくなる必要もない。

 哀しくなってきたとは何なのだろうか。知識とは何かということだ。番組には、芸能人としてはインテリ(という言葉も彼らは知らなかったが)と思われている参加者が意図的に混在させられている。インテリとおバカなタレントのギャップが最初は面白かった。インテリと思われている参加者は決して彼らを見下していない。リング上で流血戦を演じるのに、旅から旅へと一緒に移動するらしいプロレスラーのように、タレントとして彼らは運命共同体だからだ。

 出題者の島田伸助の態度に尊大さが目立ってきたのが哀しさの原因だった。当たり前だが、出題者は回答を知っている。クイズ番組というルールの中では、それだけのこと。そこに少しでも尊大さが混在すると、番組は成立しにくくなる。視聴者の中にもある、おバカなタレントへの尊大さを気づかれてはまずい。

 それが難しいのだが、知識は、一定の時間と努力によって手にできる。勿論、そのためには経済的、時間的、環境的な余裕が必要だ。以前、東京大学生を取材した。彼らの多くが、両親のどちらかが東大出身だったり、弁護士などの職業だったりして、かつての苦学生はいなかった。知識は、現実社会では、それだけで「力」となる可能性があり、知識を獲得できる環境は継承され続ける。それが当初はうまく隠されていたのに、知識と尊大さが結びつくと、この番組はもう成立しない。

 おバカなタレントたちは他局の番組にも続々と進出している。日本テレビ系で毎週、火曜日の19時58分から放映される明石家さんまの「踊るさんま御殿」にも、何人かが参加していた。明石家さんまは、彼らに対して少しでも尊大さを見せたら、番組の枠組みが全て壊れるのをよく知っているから、いつもと同じ態度で番組を進行させた。

 島田伸介は、選挙のたびに出馬が噂される。彼はテレビ朝日系で田原総一朗がメインキャスターを務める番組に抜擢された頃から、社会的関心というベクトルを手にしたようだ。明石家さんまとの違いはそこだ。出馬が噂されるという立ち位置をうまく利用している。

 「踊るさんま御殿」で、おバカなタレントたちの将来を決定的に左右するかもしれな発言をしたのが自由民主党の片山さつき代議士だった。彼女がフランス留学時代の逸話を語ると、他の参加者は、それにほ〜っと驚きの声を上げる。そして彼女はおバカなタレントたちの余りの酷さに、番組の最後で「義務教育のあり方から考え直さないと」と発言した。

 これで全て終わりだった。おバカなタレントたちが、ただのおバカになってしまった。番組の空気が読めないのは、強すぎる社会的な関心のベクトルの果てであり、知識は「力」と潜在的に思っている証だ。島田伸介はきっと迷っている。選挙に出馬でもすれば、そんな姿を見せることになる。ギリギリの処で踏みとどまるのが自分の立ち位置を保つことだと躊躇している。

[2008.02.02]

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