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 熱狂、そして期待と不安の中でオバマ大統領が誕生してから国民とのハネムーン期間が過ぎた。巨額な財政支出が伴うため、伝統的に小さな政府を指向する保守派からは異論もあるが、矢継ぎ早に繰り出した施策への支持は60%強と高い。

 キューバのグァンタナモ基地の閉鎖、水攻めなど違法性の高い尋問手法の否定、長崎・広島の原爆投下への道義的責任への言及など、彼は強大な軍事力を背景としつつも、それを一義的に使用するのではなく、かつてのアメリカの理想だった高いモラルをもって国内を、そして世界を説得しようとしている。

 彼の大統領に至る個人史を紐解くと、それ自体がアメリカを探す長く、壮大な旅だった。黒人の父親と白人の母親との間に生まれたハーフ。自分は誰なのか。母親が再婚し、幼少期を過ごしたインドネシアではイスラムの人々の中で育った。ハーバードロースクールを卒業した後、シカゴに戻り、有権者登録活動に関わった後、弁護士として法律事務所に勤務し、やがてシカゴの貧しい貧民街へと向かった。

 大統領就任式の際、彼のフルネームが告げられた。バラク・フセイン・オバマ・ジュニア。自身はイスラム教徒ではないというが、ミドルネームには「フセイン」とある。イスラム教徒だった父親から与えられたものだ。

 中東歴訪の途上、エジプトのカイロで行った演説では、ミドルネームが「フセイン」であることを紹介し、イスラム世界との和解を目指すと語った、この一点をもってしても、彼が、今、現在、この時代に登場した必然性がある。天上の何者かが歴史を書いているとは思わないが、それでも、歴史は実に見事な演出をしてくれる。




 サイモン&ガーファンクルがやってくる。16年前のコンサートにも行った。その時は、懐かしさを再確認するような自虐的な気持ちもあったが、今回のコンサートでは、彼らが必ず謳うであろう「アメリカ」を聴いてみたい。

 「アメリカ(American)」。映画「卒業」のカップルが二人の未来とアメリカを探しに旅するような楽曲。

They've all come to look for America
All come to look for America
All come to look for America

 民主党の大統領候補選挙を争い、国務長官に就任したヒラリー・クリントン。それまで政治的には休眠していたようなベビーブーマー世代、中でも女性達が彼女を支持した。

 それでも、ヒラリーがワシントンのインサイダーであり、再び、共にアメリカを探せるのか、彼らは疑念もっていた。結果はオバマの勝利に終わったが、ヒラリーの敗北演説をもって、彼らはきっと気がついたに違いない。もう一度、オバマとアメリカを探しに行こうと..。

 この詩は、こんなフレーズから始まる。
Let us be lovers, we'll marry our fortunes together
I've got some real estate here in my bag

 翻って私たちの今はどうだろうか。アメリカと同様、さざまな問題を抱え、誰もが不確かさを増した未来の前に立ちすくしている。

 私たちには、「アメリカ(American)」に匹敵する詩はあるのか。「アメリカ(American)」は、そんな私たちへの詩でもあるはずだ。

 優れた楽曲は時空を越えて、歌い継がれ、歴史の節目節目に再び、姿を現す。そんな今、現在を確かめるためにも、16年ぶりのコンサートに行ってみよう。

7月8日(水)ナゴヤドーム
7月10日(金)東京ドーム
7月11日(土)東京ドーム
7月13日(月)京セラドーム大阪
7月18日(土)札幌ドーム

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