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 カサンドラ・ウィルソン(Cassandra Wilson)。1955年12月4日、ミシシッピー州ジャクソンの生まれの女性ジャズ・ヴォーカリスト。「ニュー・ムーン・ドーター」で1996年度のグラミー賞最優秀ジャズ・ヴォーカル・アルバム賞の受賞、2001年には「タイム」誌でベスト・シンガーに選出された。

 ジャズ・ヴォーカリストと紹介したが、ジャンルに拘らず、ジャズ、ブルースのスタンダード・ナンバーからポップ、ロック、フォークまで歌う。それでもベースにはブルースへのリスベクトが息づいており、ブルージーな歌声が渋い。楽器のように歌声を操る独特な歌唱法で、その楽曲を聴くと、すぐに彼女だとわかる。




 中古レコード店主だった父親は熱心なジャズ・ファン、母親もモータウン・ミュージック・ファンという家庭に育ち、クラシック・ピアノを7歳から学ぶ。そんな環境だから、幼少期に父親のレコードも聴き放題で、ジャズにも触れる。中でもビリー・ホリデイに強い感銘を受けた。

 12歳からはギターも始め、作曲にもチャレンジする。ジョーン・バエズ、ジョニ・ミッチェルにも影響を受け、ジャクソン大学入学後、プロとなるが、初めてのステージはギターの弾き語りだった。
 81年にニューオリンズへ転居後、エリス・マルサリスとアール・タービントンに師事して本格的にジャズを学ぶ。83年にはブルックリンへ移り、スティーヴ・コールマンらと出会い、グループ「ファイヴ・エレメンツ」の初代ヴォーカリストとなる。85年12月、コールマンの支援で、初リーダー作「ポイント・オブ・ヴュー」を録音。
 転機となったのは、93年のブルー・ノート・レコードとの契約。「ブルーライト」に続く96年の「ニュー・ムーン・ドーター」で第39回グラミーの「最優秀ジャズ・ヴォーカル賞」を受賞。

 マイルス・デイヴィスの器楽曲を彼女ならではの独創的な解釈で歌い上げた「トラヴェリング・マイルス」の発表でセンセーショナルな話題をさらう。このアルバムあたりから日本でも注目され、多くのファンを獲得する。

 02年には、故郷のミシシッピーで「ベリー・オブ・ザ・サン」を録音。このアルバムでは、ロバート・ジョンソンやボブ・ディランらのナンバーをカヴァーし、自身のルーツの探求へと向かう。06年の「サンダーバード」ではエレクトロ・ポップな新機軸も打ち出した。20年ぶりのソロ・アルバム「ラヴァリー~恋人のように~」はスタンダード集。ここでも美しく、繊細な歌声を披露している。折に触れ、来日しており、老舗ジャズクラブにも出演している。


「ニュー・ムーン・ドーター」

 1996年度のグラミー賞最優秀ジャズ・ヴォーカル・アルバム賞の受賞作。 オリジナル5曲の他はU2、サン・ハウス、ハンク・ウィリアムス、ニール・ヤング、モンキーズのカバー。
 前述したように彼女はギターの弾き語りでステージ・デビューしているので、それら多種多様な楽曲を取り上げたことに違和感はなかったと後に語っている。バンジョーやペダル・スティールなどを加えた独特の楽器編成もユニーク。

1.奇妙な果実
2.恋は盲目
3.ソロモン・サング
4.デス・レター
5.スカイラーク
6.ファインド・ヒム
7.泣きたいほどの淋しさだ
8.恋の終列車
9.アンティル
10.ア・リトル・ウォーム・デス
11.メンフィス
12.ハーヴェスト・ムーン
13.ムーン・リヴァー

「トラヴェリング・マイルス」


 彼女の地位を不動のものとした前作「ニュー・ムーン・ドーター」から3年ぶりのソロ・アルバム。マイルス・デイヴィスへのオマージュ。歌心溢れるマイルス・デイヴィスの初期の代表曲を思い入れたっぷりに歌い上げている。

 ジャズ・ギタリストのパット・メセニーなど有名ゲストも参加、彼女自身の制作と解釈によるブルーな感触のサウンドが素敵だ。

1.ラン・ザ・ヴードゥー・ダウン
2.トラヴェリング・マイルス
3.ライト・ヒア・ライト・ナウ
4.タイム・アフター・タイム
5.ホエン・ザ・サン・ゴーズ・ダウン
6.セヴン・ステップス
7.いつか王子様が
8.ネヴァー・ブロークン
9.レザレクション・ブルース
10.スカイ・アンド・シー
11.パイパー
12.ヴードゥー・リプライズ
13.プランシング


「サンダーバード」

 2006年3月発表のアルバム。プロデュースがT・ボーン・バーネットのためかよりコンテンポラリーな仕上がりになっている。

 バーネットは1948年セントルイス生まれでテキサス育ちのシンガー・ソングライター、ギタリスト、プロデューサー。映画音楽の作曲でも知られており、「アメリカ、家族のいる風景」「ウォーク・ザ・ライン~君につづく道」などが彼の作品。ボブ・ディラン、エルヴィス・コステロらとの活動も有名。

 彼と意気投合したカサンドラは、本作で、にブルース、R&B、カントリー、フォークなどが一体となったアメリカン・サウンドを生みだしている。

1.Go To Mexico
2.Closer to You
3.Easy Rider
4.It Would Be So Easy
5.Red River Valley
6.Poet
7.I Want to Be Loved
8.Lost
9.Strike a Match
10.Tarot

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