最新映画、話題作を観るならワーナー・マイカルで!
top pagemovieスクリーンの向こうへ(バックナンバー)











「ホリディ(原題:THE HOLIDAY)」

 監督は2000年「ハート・オブ・ウーマン(WHAT WOMEN WANT )」、2003年「恋愛適齢期(SOMETHING'S GOTTA GIVE )」で成功を手にしたナンシー・マイヤーズ。そう聞いただけで、この映画のテイストはすぐに思い描ける。男女の恋愛を巡る機微、ハラハラさせられる展開、洒落た会話、心温まるささやかな再生のストーリー。そしてただの恋愛映画だと思って出かけると、ちょっとした裏切りも用意されている。

 3月24日(土)から日劇3ほか全国一斉ロードショー公開です。

 主なキャストは、キャメロン・ディアス、ケイト・ウィンスレット、ジュード・ロウ、ジャック・ブラック。今をときめく豪華な布陣だ。彼らは、これまでのイメージを裏切り、また魅力を更に増して、楽しそうに役柄を演じている。

 キャメロン・ディアスは身体いっぱいを躍動させ、コメディアンヌとしての魅力を発揮、ケイト・ウィンスレットは、凛とした強さが際だった「タイタニック」の主人公から片思いに悩む女性に変身している。

 色男ぶりが目立っていたジュード・ロウは、家族の現実を受け入れ、誠実さ溢れる大人の男を演じている。この彼の役柄が本作の隠されたテーマを解く鍵ともなっている。ジャック・ブラックも、はちゃめちゃキャラクターはそのままに、仕事を愛し、周囲へ優しい配慮ができる男を演じている。




 舞台はクリスマスを挟んだ二週間のロスとロンドン。燦々と輝く西海岸の太陽、寒さ厳しい銀世界と対照的な舞台設定.....。

 アマンダ(キャメロン・ディアス)は映画の予告編制作会社の経営に成功し、ビバリーヒルズのプール付きの豪邸に住んでいる。予告編の編集シーンが登場するが、作業は全てデジタル化。そんなハリウッド映画の現在もかいま見させてくれる。

 アイリス(ケイト・ウィンスレット) はロンドンで編集者をしている。住んでいるのは郊外のこじんまりとしたコテージ。部屋には暖炉が燃えて、大好きな本に囲まれ、愛犬と暮らしている。

 二人とも知的で、やりがいのある仕事をもっている。ただ、つきあっている恋人が駄目男だという共通の問題があった。まだお互いの存在は知らない。

 アマンダの彼氏はリビングのソファーで目を覚ます。関係もマンネリ、若い女の子との浮気がばれて、家からアマンダに追い出される。ビジネスの世界で闘い、勝ち抜いてきたアマンダは、怒りと哀しさに震えているのに涙が出てこない。

 アイリスには3年間、曖昧な関係を続けている男がいる。今年こそプレゼントをクリスマスに受け取ってもらい、気持ちを確認しよう。デスクの引き出しの中に、プレゼントを入れ、手渡すタイミングを考えている。社内パーティが開かれる。その男は仕事仲間の前で、酷い仕打ちをする。何と他の女性との婚約を発表してしまうのだ。

 デスクに戻り、パニックに陥るアイリス。ここにはいられない。すぐに休暇をとろう。インターネットで偶然、「ホームエクスチェンジ」のサイトを見つけ、行き先を探し始める。そこで見つけたのロスのアマンダの家だった。

 二人のチャットが始まる。アマンダもロスを離れたかった。アイリスのコテージの写真を見て、気に入る。「いつから始めるの」「すぐに.....」。そして、二人は飛行機に乗っていた。




 ロスに着いたアイリス。タクシーの車窓からは海が見え、冬のロンドンでは考えられないような明るい太陽が降り注いでいる。

 住所を書いたメモを片手に、ようやくたどり着いたのは、なんとビバリーヒルズの豪邸だった。プールを見ては歓声を上げ、ベッドにダイブしたり、はしゃいでいる。


 アマンダもロンドンに着く。こちらは運転手付きの車なのに、問題が発生。コテージまでの狭い路が凍っていて、途中で降ろされ、重たい荷物を引きずってコテージまで歩くはめになる。どこまでもついていない。

 それでも部屋に入ると、とてもいい感じ。誰にも邪魔されない一人になれる静かな環境。沢山の本がある。アイリスの愛犬もなついてくれる。そして暖炉に火を入れ、二週間の一人暮らしが始まった。




 ある日、アイリスは、老紳士が街中で立ち往生しているのを見つけ、彼を車で自宅へ送り届ける。ハリウッド黄金期に活躍した老脚本家アーサー(イーライ・ウォラック)だった。
 彼の部屋に入ると、窓際に無造作にオスカー像が置かれていたりする。話し相手もいない二人は一緒に食事したり、散歩に出たりするようになる。

 映画の話題を楽しそうに聞いているアイリス。家には仕事柄、アマンダが収集した大量のDVDがある。一人で映画三昧を計画する。

 アマンダの不在を知らない仕事仲間が恋人と連れだって訪ねてきた。映画音楽の作曲家のマイルズ(ジャック・ブラック)だ。恋人を紹介するマイルズ。二人連れを目にして、少し寂しそうな表情を浮かべるアイリス。まだ元カレへの思いは断ち切れていない。

 マイルズの恋人は駆け出し女優だ。ロケでロスを空けているある日、二人はリビングで話し始める。マイルズも、恋人とうまくいっていない様子。容姿に自信が持てず、恋人の気持ちが信じられないと愚痴り始めると、アイリスは、3年間も二股をかけられ、酷い仕打ちを受けたと堰を切ったように話し始める。もっと酷い傷つき方をしているアイリスに言葉を失うマイルズ。

 映画が共通の話題となる二人。マイルズの仕事部屋に行くと、アイリスのためにシンセサイザーを弾いてくれる。DVDのレンタルショップで、マイルズは名作の映画音楽を次々と口まねし、笑わせてくれる。元気づけようとする心遣いがアイリスには嬉しい。

 帰り道に二人で食事をしていると、店の外をロスにいないはずのマイルズの恋人が男と歩いている。店を飛び出し、問いつめる。そしてマイルズも恋を失った。




 アイリスの愛犬を話し相手に、コテージに引きこもっているアマンダのところにも不意の来客がある。アイリスの恋人? やって来たのはパブで酔いつぶれたアイリスの兄のグラハム(ジュード・ロウ)だった。酔っぱらってしまい、自宅に帰れないと、いつも妹の家に泊まるのだから、「今晩も泊まっていいかい」。

 グラハムの迎え酒にアマンダも付き合い、二人で飲み始める。何もかも忘れるために旅に出たのだし、どうせ二週間でロスに帰る。一時のアバンチュールもいいかも。初対面なのに、軽いキスから二人はできてしまう。

 グラハムは秘密を明かさない。心温まるエピソードとして、物語の展開の重要な要素となるのだが、そこでは独身だと告げる。それなら二人とも後腐れもない。

 こうやって四人はホームエクスチェンジした土地で、周囲の人たちとの交流の中、しだいに失恋の傷も癒え、気持ちも落ち着いていく。

 一人で寂しくクリスマスをやり過ごさずにすんだアマンダとアイリス。年末の休暇を利用してロンドンにやってきたマイルズとロスには帰らなかったアマンダを交えて、新しい関係がスタートしていく。最後はいつものハッピーエンド。




 恋人の一度の浮気も絶対に許せない潔癖なアマンダ。両親の離婚がトラウマになっている。ハリウッドでの厳しい競争に勝ち抜くために闘ってきた。恋人と別れても涙も出ない。主導権を握っていたのは彼女の方。だから荷物ごと、家から彼氏を追い出したりしている。それでも一人でいる自分がどうしても納得できない。

 3年間も片思い状況のアイリス。社内の女性と二股をかけられていたのも気づかない程、彼氏のことを思い続けている。同僚が「あんな男はやめたら」とアドバイスしてくれても聞こえない。アイリスの優柔不断さは、相手の男の行動で増幅されていく。ロスに旅立った後も、頻繁にメールで甘い言葉を送ってくるようなずるい男なのに...。

 恋愛、そして男性に対して全く違った対応をみせる主人公の二人の女性。一見、自立しているようだが、つきあっている男性に振り回されてもいる。

 この物語のもうひとつの隠されたテーマは家族だ。恋愛における誠実さと結婚におけるそれはきっと大きく異なるに違いない。勿論、事実婚など、男女の結びつきも多様性をみせているが、それでも男女の間に子供が生まれることで、新しい関係も生まれる。家族って何だろうと.....。

 晩婚化、少子化。女性が結婚しなくなっている。ここまで書いて非難される恐れも感じる。結婚しづらい社会的な環境もあるのだからだと.....。二人の異なる性の間における誠実さとは何だろう。そんなことを考えさせられる物語だ。

 


 老脚本家のアーサーが劇中で語る言葉がある。「シネコンもDVDもなかった」「公開後、一週間でその映画の勝敗がついてしまう」「映画がヒットチャートのようになっている」「こんな状態では映画が育たない」。
 
 ナンシー・マイヤーズの経歴を読むと、脚本家として長く活躍しているが、初監督の1998年「ファミリー・ゲーム/双子の天使(THE PARENT TRAP )を手がけるまで約20年が必要だった。生き馬の目を抜くようなハリウッドで、女性として、さまざまな壁があったのが想像できる。

 キャストだけを見て、映画ファンの多くは、映画館に足を運び、本作は興業的には好成績を収めるだろう。
 興行的に成功しないと生き残れない。それは厳しい現実だ。それでも映画は興行成績だけで善し悪しは決まらないのではないか。きっと、アーサーの言葉は、彼女の思いだ。

 ハリウッドと映画へのオマージュ。こんなことが起こるはずはないとは思いつつ、夢を見させてくれる。一時の夢として、映画に何かを託したいと。


監督・脚本:ナンシー・マイヤーズ
キャスト:キャメロン・ディアス、ケイト・ウィンスレット、ジュード・ロウ、ジャック・ブラック、イーライ・ウォラック、エドワード・バーンズ、ルーファス・シーウェル)ほか
2006年/アメリカ /カラー/113分
配給/UIP映画
公式ホームページ
http://www.sonypictures.com/movies/theholiday/(英語)
http://www.holiday-movie.jp/(日本語)

(C)2006 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.

2007.02.28掲載
善き人のためのソナタ(Das Leben der Anderen)
オール・アバウト・マイ・マザー(TODO SOBRE MI MADRE)
movie





Copyright (C) 2012 Archinet Japan. All rights reserved.