ユナイテッド・シネマ 最新映画を自動更新でご紹介!
top pagemovie最新記者会見(バックナンバー)









『海を飛ぶ夢』
来日記者会見
監督・脚本・音楽:アレハンドロ・アメナーバル
主演:ハビエル・バルデム「夜になるまえに」アカデミー賞(R)主演男優賞ノミネート
原作:ラモン・サンペドロ著"LETTERS FROM HELL"ほか
日時:3月10日(木)
会場:パークハイアット東京ヴェネシアンルーム
出席者:アレハンドロ・アメナーバル監督
公式サイト・海を飛ぶ夢
ベネット・ミラー監督来日記者会見に、"たなカポーティ"登場
 第77回アカデミー賞外国語映画賞に輝いた『海を飛ぶ夢』。本国スペインでは、ゴヤ賞史上最多の14部門を制覇し、さらに、アメリカのゴールデングローブ外国語映画賞、ヨーロッパ映画賞では監督賞、ベネチア国際映画祭では主演のハビエル・バルデムが主演男優賞を獲得し、世界中から絶賛を浴びている。

 本作で、監督・脚本・製作総指揮・編集・音楽の5役を担ったアレハンドロ・アメナーバル監督が来日した。


アメナーバル監督(以下AA):コンニチハ。僕は3回目の来日ですが、2作目の『オープン・ユア・アイズ』は東京国際映画祭でグランプリをいただき、日本ではいつも温かく迎えてもらっています。

Q:本作は、事故で首から下が麻痺し、自ら死を望んだラモン・サンペドロの手記を映画化した物語。実話を映画にするうえで、監督はどんな点に注目したのでしょうか?

AA:僕は、物語の人間的な側面に興味を引かれました。実は、尊厳死を扱った映画になるとは思っていなかったのですが、ラモンが20代で世界中を旅し、事故にあい、人生の多くを周りの人に分かち与え、さらに、多くの女性が彼に結婚を申し込んだということを知り、ぜひ映画化したいと思いました。

Q:長編デビュー作『テシス 次に私が殺される』や、続く『オープン・ユア・アイズ』、ハリウッドへ進出した『アザーズ』など、サスペンス作品を撮り続けてきたアメナーバル監督ですが、そこには常に、「死」が描かれていますね。

AA:確かに、僕の作品は死が意味を持っていることが多くありますが、それが常に主要なモチーフになるべきとは思っていません。
 僕個人、死とはどういうものかに興味があり、生きようとするほど死を身近に感じますし、目を背けられないものだと思います。この物語は、死に直面すると同時に、自分が人生をいかに愛しているかを気付かせてくれます。

Q:ラモンが空を飛ぶ夢のシーンについて、そこに込めた思いを教えてください。

AA:あの部分は、観客が、夢を見ているというよりも実際に空を飛んでいるように感じて欲しいと思いました。実際にラモンが住んでいた地域をヘリコプターで飛び撮影しました。編集の段階でスピードを変え、そこへプッチーニの音楽をつけて、映像が完璧にシンクロしていくようにしました。

Q:ラモン役を演じたハビエル・バルデムさんについて、キャスティングの理由を教えてください。

AA:僕は実は、50代のキャラクターを30代のハビエルが演じられるのか不安に感じていました。しかし、彼はスペインで最も素晴らしい役者であり、この役は最高の俳優に演じてもらうつもりだったので、どうしてもハビエル・バルデムが必要だったわけです。彼も、どれほど難しい役か理解していて、躊躇していました。
 メイクだけでなく、ラモンのエネルギーも表現し、観客が目を閉じていても彼が50代と感じられることが必要でした。ハビエルはとても長い過程を経て、数ヶ月かけて役作りしました。彼で行ける、と確信したのは、現場で、彼がベッドに寝ているのを見たときでした。

Q:映画化にあたり、ラモンのご遺族に取材をされたそうですが、完成した作品について、ご遺族はどんな感想を語っていますか?

AA:彼らは、この映画について特別に前向きだったわけではありません。僕は最初、事実よりも、ラモンの人生の側面から物語を描こうと思っていたのですが、次第に、これはラモンの物語であり、彼の人生のどんな部分も省きたくないと思いました。
 ラモンの家族が唯一不満だったのは、ラモンが義姉マヌエラの前で泣いたシーンです。実際の彼は人前では絶対に泣かなかったそうです。しかしハビエルにとって、役作りのために、精神的に崩れるシーンが必要だったので、家族も納得してくれました。
 アカデミー授賞式では、登壇前にひどく緊張していた、という監督。故郷のマドリードでは、みんながオスカー像と写真を撮りたがるそう。「僕にお祝いを言うより先に、一直線にオスカー像に走りよるんだ!」と、苦笑します。

Q:バグパイプを使った音楽が使われていますが、その理由は?

AA:バグパイプは、物語の舞台であるスペインのガリシア地方に特有の楽器で、その要素を取り入れるため、ガリシアの有名なバグパイプ奏者、カルロス・ヌニェスに演奏を頼みました。音楽は、ラモンにとって彼を包むブランケットのような役割として考え、大きなオーケストラがピアニシモで、弦楽器で弾くものにしましたが、叙事詩的なシーンにはオーケストラの変わりにバグパイプを使いたいと思いました。この物語は死についての物語ですが、それによって生きる喜びを表現したかったのです。

 前3作のサスペンス・フィクションを経て、「尊厳死」という社会問題を描いた監督だが、本人は、「映画はできるだけ自由に撮りたい。情熱を傾けられる作品を撮っていきます」とコメント。まだ33歳という若い才能だけに、今後も楽しみだ。





ワーナー・マイカル・シネマズ>
Copyright (C) 2012 Archinet Japan. All rights reserved.