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『博士の愛した数式』
記者会見
監督:小泉堯史
出演:寺尾聰、深津絵里、吉岡秀隆
ほか
日時:10月17日(月)
会場:丸の内ルーブル
出席者:小泉堯史監督、小川洋子(原作)、寺尾聰、深津絵里、吉岡秀隆
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 第1回本屋大賞を受賞し、50万部のベストセラーを記録した「思考のラブストーリー」が映画となった。

 『博士の愛した数式』。事故の後遺症で、80分しか記憶が続かなくなってしまった数学博士と、その家で働き始めた若き家政婦、ルートと名づけられた10歳の息子が織り成す、爽やかで繊細な人間ドラマです。この映画の完成披露試写会で、上映後に記者会見が行われた。


Q:小泉監督は、映画に登場する美しい風景にはどのようなこだわりを持って演出しましたか?

小泉:人間も自然の一部だ、ということはもちろんですが、季節が移ろうなか、博士の気持ちにも暖かさが芽生えてきます。自然と気持ちの移ろいを重ね合わせてみたいと思いました。

Q:寺尾さんは、小泉監督とは3本目の作品ですが、いかがでしたか?

寺尾:小泉監督とは、黒澤明監督の下で一緒に育った兄弟子で、分かり合っているところがあります。
 小泉さんはいつも穏やかに見守っていてくれて、口数が少なく、行動ですべてを表してくれます。自分の兄貴分に使うのは自画自賛みたいですが、正直、才能という言葉で一番表せるという気がします。そのかわり、手取り足取りやってくれるほど甘くはないので、こっちも一生懸命勉強して、作り上げる時間がかかります。

 黒澤監督に、「真ん中で見得を切っているのが主演じゃなく、どの役もすべて主演に見えるようにするのは、監督と、最初に名前が来る人間の務めだ。どうしたらそうなるか勉強しろ」といわれたのが頭に焼き付いていましたが、今回は、少しそこへ近づく努力が実ったという気がします。深津さんにしても吉岡くんにしても、主演映画といっても納得いくだろうと思います。それが小泉ワールドだという気がしています。

Q:皆さんが一番印象に残っているシーンや、気に入っているシーンを教えてください。

深津:どれというのは難しいですが、博士とルートと私が、湖に3人でたたずんでいるシーンが印象深いですね。何か言葉を交わすわけでもないのですが、印象に残っています。

小川:それは原作にはなかった場面で、博士が小石を投げると波紋が水面に広がって、それが大きなゼロになって3人を包むような感じでした。あの場面を見た時に、小泉監督が私の作品を読んでくださって、感じてくださったものが伝わってくるようで、感動いたしました。

吉岡:能の場面は奥深いものがあったと思います。ルート先生が博士のことを大好きなのと同じように、小泉監督も、黒澤監督が大好きなんだな、と感じました。

寺尾:全シーンが印象的としかいいようがないんですが、最後の、海辺のキャッチボールのシーンは、これで終わりなんだ、と、思い出として残っています。

小泉:全部です。小川さんの原作を読んだとき、最後、海が光っているところで、博士とルートがキャッチボールをしている。そのシーンが最初に自分の中に入ってきて、このシーンを撮りたいな、と思ったのが、この企画の始まりです。そして最後の一行に、ルートは中学校の先生になった、という言葉があり、そのつながりが一番強かったと思います。

Q:俳優の皆さんは、それぞれ、役作りで難しかった点はどこですか?

吉岡:小泉監督からは、ルート先生がどれだけ博士のことが好きか、生徒たちにわかればいい、とだけしか言われなくて、4日間のリハーサルでも何もつかめないまま本番当日になってしまい、テストも何もなくて、メイク中に「スタンバイできているから本番でいいよね」と言われ…(笑)。まだ現場も見ていないし、スタッフの方に「おはようございます」の一言も言っていないまま本番で…小泉監督の後ろには黒澤監督がいるような気がするし、とっても緊張するんです。

深津:私は、小泉監督と初めてでしたから、とても緊張していました。子供がいる役も初めてで、何か母親らしいことばかりに気持ちがとらわれていましたが、監督から「何もしなくていい」と言われ、落ち着きました。

 変な作為はなしに、堂々としていればいいんだな、と思って、ひたすら、「息子が楽しい気持ちでいてくれることが大切」という言葉を心にしまっていたのと、寺尾さん演じる博士のことを、誠意をもって大切にしたい気持ちを心にとめておきました。

寺尾:私は学生時代から数学が苦手で、その私が数学の先生をやるということで、人間の心理以前に数学を理解しなくてはいけないので、格闘しました。この映画を、大人はもちろん、学生さんにぜひ見てもらいたいです。数学になじめ、というのではなく、難しいことでも違う人生観を持てると気付くんじゃないかなと思います。
 それから、記憶障害については、僕は長いスパンの記憶喪失しか知らなかったので、80分しか記憶がもたないというのが最初は理解できませんでした。記憶が遠いとき以外は普通の人なので、役としてはデフォルメしにくい感じがありました。その部分でだいぶ苦労しましたが、クランクインしたとき、寺尾さんでやってください、といわれたので、その一言で自然に、とても気持ちよく博士に浸っていられました。深津さんが大変すがすがしくピュアに演じてくれたので、何の迷いもなく、すっと博士に入っていけて、とても感謝しています。

Q:寺尾さんは、ルート君と野球をするシーンがありますが、ご自身は野球は?

寺尾:僕は、中学生の時は野球部の4番バッターだったんです。高校から勧誘も来て、甲子園を目指して神奈川県の高校に入りましたが、3ヶ月で退学になりました。それから色々なことをしているうちに、今ここで役者として座っています。野球はとても好きで、キャッチボールひとつでも、経験のある人とない人では微妙に形が違うので、その意味では楽にキャッチボールも出来て、非常に楽しく、うれしかったです。

Q:小泉監督は、どのようにこの原作と出会ったのですか?

小泉:この本に出会ったのは、発売されてすぐでした。表紙と、オビに書いてある「思考のラブストーリー」というのに惹かれ、すぐに買って読みました。すごく素晴らしいと思って、映画化の権利を買いましたが、それからが問題で、シナリオをどう書くか、悩みが多かったです。原作に助けられて、シナリオにする仕事は非常に楽しい仕事でした。

Q:では、小川さんは、ご自身の作品が映画化された感想は?

小川:原作は、数が主人公といえる小説です。数式で表す永遠の美しさは、本来は言葉では表現できないもので、それを小説で表現しようとしたことが、私自身書いている時に非常に苦しいところでした。映像になれば、言葉の不自由さから解放されて、数式の持っている美しさが画面からあふれ出てくれるだろうと願っていましたが、その通りになりました。こういうものを画面で見せていただけて、原作者として非常に幸せだったと思います。

Q:寺尾さんは、毎回めぐる80分をどのように感じながら演じていましたか?

寺尾:最近、物忘れが激しくて、忘れるのは日常に近いところもあります。80分しか記憶が持たない、という点だけを演じようとすると、自分が抱いている博士像と少し違っていて、この作品の本質は、博士がどういう人間であり、博士の周りの人々がどう関わっていくのか、ということですから、あまり80分ということにはこだわりませんでした。

Q:家政婦役の深津さんは、お料理の手際がよかったようですが。

深津:手際が良かったように見えただけですね(笑)。皆さんの協力で、指導していただきました。

Q:吉岡さんの髪型は、寝癖がとても印象的でしたが。

吉岡:僕は髪型や衣装は、監督とメイクさんにお任せしていまして、気がついたらああいう髪型にされていました。

小泉:小山町にある中学校に数学の授業を見学に行ったら、数学の先生で、まさに寝癖にこだわった先生がいて、授業の間髪型を気にしていたんです。それをシナリオに取り入れました。




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