2007年もいよいよ終幕間近となりました。個人的には、今年、最も大きなエポックとなったのはアップルのiPod touchでした。
携帯電話の画面のような極小な面積のデメリットを逆手にとったような操作性の素晴らしさ。それが魅力です。
「画面上で指を広げたい方向に移動すると、程良い速度で、画面上のメニューなどが追随してきます。最初はゆっくり、指の移動の加速に対応して、移動も加速します。この感覚がとても人間的です。ユーザーとiPod
touchを結ぶインターフェイスを徹底的に研究し、それをソフトウェアとして組み込む最大限の努力の跡が見受けられます」
そして、このiPod touchの操性を活かしたiPhoneの発売も、年明けにはあるかも..といわれています。
来年もアップルがデジタルワールドを席巻するのかなと思っていたのですが、11月6日に驚きのニュースが飛び込んできました。メジャーな一般紙、経済紙では、かなり小さな扱いでしたので、見逃した方もあるかもしれません。
それは、米グーグルが基本ソフト(OS)を含む携帯電話開発に必要なソフトウエア一式「アンドロイド」を開発し、無償で公開するというものでした。
携帯電話も、ハードウェア的には、もう実際的にはパソコンと同様の能力をもっています。その携帯電話上で、さまざまなソフトウェアを動かすためには、パソコンと同じように基本ソフト(OS)が必要です。
現在、携帯電話の基本ソフト(OS)は、シンビアンが主流で、携帯電話市場で約70%のシェアを持っているといわれています。この携帯電話の基本ソフト(OS)をグーグルは無償で公開するというものです。
正確には、基本ソフト(OS)に加えて、ブラウザインターフェイス、ミドルウェア、アプリケーションが含まれるとのこと。さらに重要なのは、これがLinuxベースのソフトウェアだということです。
Linuxは、誰もが自由に使える基本ソフト(OS)として爆発的に普及し、一大勢力となりました。要は、このオープンがキーワードのLinuxに+アルファして米グーグルが基本ソフト(OS)に加えて、ブラウザインターフェイス、ミドルウェア、アプリケーションをオープンしてしまうということです。
どこに衝撃があるのか。それは理論的には、誰もが、携帯電話上で動くソフトウェアを開発できてしまうわけです。
米グーグルは着々と手を打っています。グーグルと33社のテクノロジ企業がアンドロイドの成功を目指して「オープン ハンドセット アライアンス」(OHA)を結成しました。この連合には、すでに台湾のスマートフォンメーカーのHTC、無線機器の米クアルコム、NTTドコモ、KDDIなどが参加しています。
一方で、現状では、米国の大手キャリアのAT&T、ベライゾンは、このOHAには加わっていません。この業界に詳しい編集者によると、携帯キャリアとしては自らの利益のために携帯ネットワークと端末をクローズドにしておきたいからかもしれないとのこと。
また、英国のボーダフォンと仏のフランステレコムもアンドロイド陣営には加わっていません。更に、全世界の携帯電話の約3分の1を販売している世界最大の携帯電話メーカーのノキアもOHAに加盟していません。
様子見なのでしょうか。それでも、アンドロイドのソフト開発キットは12日に公開予定といわれており、それを受けて2008年の後半には携帯端末が市場に投入される見込みとされています。
インターネットの世界であっとという間に巨人となったグーグル。様子見の各社も、それは無視できないのではないでしょうか。
日本企業の動向をみてみましょうか。携帯電話のパソコン化、高機能化で、すでに携帯電話上で稼働するソフトウェアは、大銀行の決済システムに匹敵するほど、巨大なものとなっているといわれています。そのためソフトウェアの開発には、巨額な費用がかかります。
それをグーグルが提供する基本ソフト(OS)によるプラットホーで統一すれば、開発費用の圧縮と開発期間の短縮が見込めます。NTTドコモ、KDDIなどが企業連合に参加している背景には、そんな思惑も見え隠れします。
これまで日本の携帯キャリアは、ハードウェアの仕様を指定してメーカーに端末を作らせ、それを買い上げて販売するという方法をとっていました。そんな状況下、グーグルの「アンドロイド」をプラットホーとして使用すれば端末開発費用を「10%削減できる」との環境はメリット大です。
また状況を複雑にしているのが、上で述べたシンビアンは、世界最大手の携帯端末メーカーのノキア、そしてエリクソンからの出資を受けており、これらメーカーがアンドロイドに乗り換える可能性は低いわけです。グーグルに乗っかって、戦略を立て、ノキア、そしてエリクソンに対抗する。思惑を交えて、2008年は、携帯戦争が勃発するかもしれません。使いも続きを掲載します。
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