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神戸のポートピアホテル設計の事例だ。このホテルは、大阪湾に面し、紀伊半島への眺望が期待できる立地に計画された。海岸線までの距離は約400m、途中には公園があり、ポートライナーが横切り、岸壁は水辺より高い。
クライアントからは4階のラウンジから海への眺望の確認が求められていた。そのため地理情報を数値入力し、人が敷地に立った際の見え隠れを最初に確認した。次に建物の情報を入力し、最終的には、完成後のホテルの4階ラウンジからの眺望確保を確認した。

4階のラウンジからの見え隠れを確認するための出力は数十本の線で描かれたものであり、現在のCGレベルから見れば実に稚拙なものだ。
しかし、この段階でも同社ではクライアントへの説明を優先し、出力としての表現にも拘りをみせた。
手前にはポートライナーの高架が置かれ、公園の木立が配置されていた。その向こうには紀伊半島がはっきりと見えていた。シンプルではあるが、美しい表現であった。

20数年も前のことだ。現在、設計者がおかれた環境からは想像するのも難しいかもしれない。この段階では、同社には入力支援のためのキャラクタディスプレイしかなかった。出力は全てXYプロッタで行い、XYプロッタがディスプレイの代役を果たした。
そして、コンピュータの性能限界と限られた時間の中でも、「シンプルではあるが、美しい表現」を追求し、鉛筆の線の濃淡にまで拘りをみせた。
当時から考えると、今は想像を絶する夢のような環境が実現している。しかし、環境の劇的な向上は建築の質的向上に貢献しているのだろうか。コンピュータによる設計援用とはハードウエアやソフトウエアの充実だけに左右されるのだろうか。
「シンプルではあるが、美しい表現」と、設計者そしてクライアントにとっても、必要なことが全て表現されている出力結果を見て、再度、考えさせられた。
(C)NIKKEN SEKKEI Ltd.
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