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代々木上原(東京都渋谷区)のランド計画研究所を訪ねた時だった。アップルコンピュータ社のAppleIIが机の上に置かれて、3次元のワイヤフレームで表現された建築の形態モデルが画面上で回転していた。当時、わが国のパソコンでは、CGの萌芽となるようなグラフィックス表現は困難であった。
画面上で回転していたワイヤフレームの形態モデルは、粗いデータであり、すぐに建築デザインに援用できるとは思えなかったが、その後の展開次第では大きな可能性も感じた。
従来まで建築(モデル)は、2次元の手描き図面として表現されていた。建築を3次元的に把握するためには、模型などを作成する必要があった。しかし、建築デザインの初期の試行錯誤において模型製作は、手間と時間がかかりすぎるなどの課題もあった。そのため建築模型は、コンペ用に作成されたり、竣工後、施主に渡されるなど本来の目的を逸脱して利用されていた。
画面上で回転しているワイヤフレームの形態モデルを注視していて、あることに気がついた。ハードウエアやソフトウエアの進化が進めれば、極めて柔軟性の高い電子情報の特性を生かすことができ、やがて建築デザインの初期の試行錯誤にコンピュータが有効性を発揮するのではないか。そして、それらは決して大学の研究室などでの出来事ではなく、一般の設計事務所や建築家の手元でも可能になるのではないか。
実際の建築物は当然のように3次元である。建築物を3次元データとして定義できれば、小規模な設計組織でも日影規制などに援用できるし、更に加えて、設計初期のデザインの試行錯誤に援用でき、設計の品質向上にも有用なのではないかと考え続けていた。
(C)Apple, Inc.
そんな思いを抱きながら筑波研究学園都市の通産省工業技術院製品科学研究所を訪問した。そこには当時、CG分野では先端なシステムとして知られていたエバンス・アンド・サザーランド(Evans
and Sutherland)社のピクチャー・システム2(PS2)があった。
それは、高解像度ディスプレイ、グラフィックタブレット、ライトペン、コントロールダイヤルなどのユニークな入出力・制御機器を備えたシステムであった。
訪問時には、同研究所の外観が3次元のワイヤーフレームとして画面上で動いていた。コントロールダイヤルを操作すると、次々と視点が変わる。また隠線処理の後、着色するとリアルな3次元の形態モデルが現れた。
しかし、このシステムは極めて高価であった。また表現できる3次元の形態モデルも今から考えれば粗いものであり、あくまでも初期の計画段階でのデザイン検討に用いられる程度のものだった。
更に、建築用に開発されたシステムではなかったため、建築的な3次元データの入力にも適してはいなかった。それでもハードウェアとソフトウェアの進化に伴い、近い将来、多くの設計者が手元で同様のことが可能になるとの強い実感をもった。
(C)X-Knowledge
Co.,Ltd.
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