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編集者としてのキャリアは、1970年代の半ばに、建築資料研究社で建築資材の価格情報を扱う「積算ポケット手帳」「建築基準法法令集」そして「住宅建築」の編集に関わることからスタートした。
特に「積算ポケット手帳」「建築基準法法令集」では、年度ごとの価格改定や条文の追加などが発生すると、多くの紙面はそのままとし、変更部分のみの追加・修正を行う必要があった。
当時は、現在のDTPのように情報を電子化し、編集するシステムが確立されておらず、追加・修正作業は手作業で行っていた。
今では考えられないことだが、古い紙面を拡大コピーし、校正用の赤いボールペンで追加・修正を加える。この方法だと、追加・変更部分は、全体の一割程度だとしても、追加・修正のない部分のページ送りをしていくなど、作業が全ページに渡り、手間のかかる作業であった。
身近な建築分野でも構造計算にコンピュータが使用されていることは知っていたので、「本の情報を全てコンピュータの中に入れておけば、追加・修正の部分のみ訂正し、ページ送りや索引付けなども容易にできるはずだ」と考えていた。
この段階でDTPの概念のようなものは想像できていたと思える。しかし、当時、コンピュータは、高嶺の花であり、また編集者が使用できるような編集に特化したシステムも存在しなかった。
(C)株式会社建築資料研究社
そんな時であった。家電メーカーのシャープから「MZ-80B」というパソコンが発売された。すぐに秋葉原に行き、カタログを手に入れた。そのパソコンもすでに手元にはないが、カタログは見つけたので、写真と当時の仕様が明らかとなった。
それは、
・CPU:Z80A(4MHz)
・ROM:BOOT 2KB キャラクタジェネレータ 2KB
・RAM:64KB VRAM 2KB
・CRT:10インチ グリーン
・表示能力:40x25/80x25(オプションで 320x200)
というものであり、現在、流通しているパソコンから考えれば、オモチャともいえないような代物であった。しかも価格も278,000円と高額であった。
早速、個人で購入し、試用を始めた。現在は、ゲームソフト・メーカーとして知られるハドソン社からHu-Basicというプログラミング言語が提供されていたので購入した。また福岡のシステムソフト社からは、米国のBasic言語の教本が翻訳出版されており、それも購入し、参考プログラムを入力していった。
しかし、日本語は、一部の日付単位程度しか使用できず、当初、考えていた編集作業に何らかの形で活用できるかもしれないとの思いは、かなわなかった。
(C)シャープ株式会社
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