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 デスク周りの整理していたら、「建築とコンピュータ」誌が見つかった。第4号はなくなっていたが、創刊号から3号までは埃まみれで出てきた。

 懐かしさもあり、創刊号をめくっていたら、本の中程にあるカラー・ページに目がとまった。

 そこには「ARCHITECTURE 2002・FUTURE STUDIO」という特集記事があり、創刊時の1982年時点で想像した未来の建築設計のシーンがイラストで描かれていた。その特集を執筆したのは、GKインダストリアルデザイン研究所[(C)GK Industrial Design Inc.の菅 泰孝氏となっていた。

 当時、パソコンは登場していたが、まだ一般に普及はしていなかった。大手建設業、設計事務所、大学の研究室では、大型汎用コンピュータやミニコンベースのCAD(Computer Aided Design)Systemも稼働していた。

 そのため20年後の状況をある程度、俯瞰できる環境にはあったが、そのページを読み返したとき、その正確な予測に驚かされた。

 そこには「ずらりと並んだ設計室のドラフターは姿を消し、エンジニアが鉛筆とトレシングペーパーを手にする時代は終わったのである」と書かれていた。現状を見る時、当時、想像した以上に、デジタル環境やその道具立ては揃ったのかもしれない。

 かつての取材先で出会った人達の中には、失われた10年間の建設業の低迷期にリストラで会社を変わったケースもあった。その間、情報化投資への格差も広がっているとの声も聞こえてきた。そんなことを考えている内に、ここ20数年間の「建築とコンピュータ」の歴史と変遷を、一編集者・ライターの立場で振り返ってみようと思い立った。

 現在、ほぼ全ての建築シーンの中で、手描きで設計図書を仕上げているところはない。若手・中堅の技術者にとっては、設計図書はCADで描くのが当然であり、20年来の建築のデジタル化の過程を詳しく知るものもないだろう。

 建築のデジタル化の過程を探る中で、建築そのものに固有の問題点やユニークさを浮き彫りにもできるだろう。この連載がどのような経緯を経て、それら若手・中堅の技術者の目に触れるのかはわからない。可能であれば、多くの若手・中堅の技術者の目にも触れることを願っている。

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