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top pagearchitecture>アントニオ・ガウディ(2)











 会場には※1)サグラダ・ファミリア聖堂内の※2)二重回転円柱の実寸模型や独特の天井の造形が醸し出す空間を追体験できる大型模型などが展示されていた。何よりも興味をひかれたのはガウディが生み出した「形」をCGで再現していたことだ。




 サグラダ・ファミリア聖堂の前にガウディが職人達のために開いた仮設学校。後にル・コルビジェが賞賛したという波打つような屋根の建物だ。その建物もCGで再現していた。

仮説学校の実物写真

 一般にもよく知られているがサグラダ・ファミリア聖堂には図面がない。そのためガウディは数多くの模型を残している。どのようにして、今も営々として建築を続けているのかは模型の再現CGをみて理解できた。

 CGの再現画像にあるように、屋根の側面両側に壁をあらかじめ配置する。屋根の波の造形を作るためには、壁を高さの異なる柱状に細かく分割し、それを直立して並べ、均等にずらし、再度、繋いで壁面を構成する。その頂点を結べば、波の形状となる。屋根も細かな柱状に分割し、両側の壁の頂点に接続するように並べていく。

 すると高度な数学的な計算をすることなく、波状の屋根が出現する。極めて複雑に見える波状の曲面を柱状の直線の連続として微分し、それを並べている。この方法では、ガウディの残した模型をもとに、その倍率を単純に計算するだけで、実物・原寸の建物として再現(建築)することが可能だ。

 この仮設学校以外にも、さまざまな建物がCGで再現されていた。それらのCGを見れば、建築の専門家でなくとも、「形」作りの仕組みはよく理解できる。まるで手品を見ているような驚きがあった。




 ガウディの時代にはCGはなかった。この手法がガウディのCGツールであったと考えられる。このような造形を生み出したのはガウディの希有な才能であった。一方で、建築にはさまざまな職能の人たちが関わる。それら多様な職能によるコラボレーションの結節点を結びつけるコミュニケーション・ツールが必要だ。ガウディはそのことをよく知っていたと思う。ガウディにCGツールを使わせたら何が起こったのであろう。興味深い仮説だ。

 CAD・CGツールの普及に伴い、建築の設計や生産の現場はデジタル化された。建物も一種、コンピュータのような様相を呈している。しかし、現場を訪ねれば、施工の自動化も進んではいるが、階段の角度を決める予備線はチョークを用いて手で引いている。このように建築の最終段階はその多くが手作業である。ここに他の製造業とは決定的に異なる建築の面白さとユニークさがある。

 コンピュータのような様相を呈している最先端の建物の現状を探りながら、翻って、建築の設計やデザインの現場で何が起こっているのか。CAD・CGツールを用いることでどのようにして新たな造形は生まれているのか。CAD・CGツールは新たな造形を生み出すために最適なコミュニケーション・ツールとなっているのか。CAD・CGツールはガウディの模型のような役割を果たしているのかを継続的な取材していきたい。

   
※1)サグラダ・ファミリア贖罪聖堂
(C) Lunwerg Archives
カサ・ミラ《ラ・ペドレラ》
ファサード:線織面
(C)Pere Vives i Ricard Pla, TRIANGLE POSTALS
  フィゲーラス邸
《ベリェスグアルト》
:天井のリブアーチ [拡大]
(C)Pere Vives i Ricard Pla, TRIANGLE POSTALS
双曲線面による生成:サグラダ・ファミリア聖堂、窓と採光窓
(C)ICUB. Dibuix CAIRAT. ETSAV(UPC)
カサ・バトリョ、屋根裏階:パラボラ・アーチ
(C)Pere Vives i Ricard Pla, TRIANGLE POSTALS
※2)二重回転の円柱:サグラダ・ファミリア聖堂
(C)ICUB. Dibuix CAIRAT. ETSAV (UPC)

スペイン国対外文化活動公社(SEACEX)

取材協力:東京都現代美術館
(C)Nov.2003 Copy & Photo by イシカワデザイン事務所

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